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続・リメイク再考

かつて、紳士服のジャケットでは、解体して生地を裏返し、もう一度仕立て直す「リバース仕立て(裏返し仕立て)」という方法がありました。生地の摩耗やテカリを隠して、服を長持ちさせるための知恵でしたが、胸の箱ポケットやボタンホールの跡は消せないので、「そこまでして着るの?」と揶揄して、「貧乏仕立て」と呼ばれることもあったそうです。
同じく19世紀頃のドレスも、仕立て直しを前提に大きな縫い代を残し、縫い目はザックザックと荒く縫われていました。着物の考え方にも通じる、当時ならではの知恵です。

でも、このような技術や発想を、そのまま現代に活かすのは難しいです。その背景にある「生地が貴重だった時代」という前提が、今とは状況が異なるからです。

ボク自身リメイクに積極的に取り組んでいますが、それは必ずしも「エコ」や「経済的」であるとは限りません。丈や幅の修正のような小規模なものならともかく、大掛かりなリメイクは手間もコストもかかります。素材の性質や状態を読み切れない不確かさがつきまとい、解体した生地のレイアウト調整やデザイン修正にも時間が必要です。損得勘定だけでは測れない領域なのです。
それでもボクがリメイクに取り組むのは、「リメイクして使い続ける」という行いそのものが、暮らしにつながるからです。もちろん、捨てたほうがよい場合もあります。技術的に限界もあります。でも、「リメイクをしながら大切に使い続ける暮らしって、美しい」と、考えています。

2025年9月09日