ジャケットからブラウスへ
このブラウスは、もともとはお母様のためにお仕立てしたジャケットでした。
その後、依頼主様ご自身が「ブラウスとして着てみたい」とご相談くださったことから始まったリメイクです。サイズはそのままでも着用できる状態でしたが、ジャケットとしては着る機会がなく、活用方法を考えられていたそうです。
幸い、生地の残りが袖や襟を作り直せる程度に残っていました。そこで、お客様からお送りいただいたタックを活かしたブラウスのイメージ写真をもとに、元の服の特徴を残しながら、新しい一着へと生まれ変わらせることを目指しました。
こうしたリメイクは、最初から完成形をすべて設計できるとは限りません。もちろん、事前に細部まで計画できれば説明もしやすく、制作も効率的です。でも実際には、服と向き合いながら少しずつ形を探していく場面も少なくありません。
庭師がまず石を置き、その石と対話しながら庭全体の姿を決めていく——そんな話を聞いたことがあります。今回のリメイクも、それに近い進め方でした。
まず脇ポケットのフラップを取り除き、セットインスリーブをラグランスリーブへ変更。肩まわりにタックを加え、柔らかな表情をつくりました。
その後、作り直した袖に合わせて襟のデザインを検討。もともとの左右非対称のシャツカラーから、打ち合わせを少し浅くしたショールカラーへ変更しました。使用されている生地が柔らかかったため、通常であれば使うことの多い芯地もあえて用いず、素材の持つ軽やかさを活かしています。また、第一ボタンをなくすことで、全体をよりブラウスらしい印象に整えました。
大規模なリメイクは、残布の有無や元の服の状態など、いくつもの条件が揃って初めて成立します。技術的な難しさだけでなく、形を探しながら進める面白さもある仕事です。
服を直しながら着続ける。そのお手伝いができたことを、とても嬉しく思っています。
