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「仕様(しよう)」は、自分で「しよう」
今回つくった綿ジャージのトップスは、縫製に入るまでにずいぶん時間がかかってしまいました。
理由は、「仕様」を決めるのに時間がかかったからです。
形そのものは、過去につくったものの流用です。
でも、ディテールを変えたことで、これまでの仕様をそのまま使うことができなくなりました。
仕様を考えるとき、普通は既存の服を参考にします。
すでに世の中にある方法には、それなりの理由があるからです。
ところが今回は、それがあまりできませんでした。
綿ジャージという素材の場合、量産工場で使われる専用機械と、ボクが使えるミシンとでは条件が違いすぎます。
布帛であれば、生産設備が違っていても仕様をかなり流用できます。でもジャージになると、それが一気に難しくなる。
今回は家庭用コンピュータミシンを使うことが前提だったので、ジグザグミシンをどう活かすかが重要なテーマになりました。
裏側の見え方や、縫製工程まで含めてきれいに収めたい。そんなことを考えながら試しているうちに、気づいたら、かなり時間が過ぎてしまいました。
1、綿ジャージのトップス
2、綿ジャージのトップス
とはいえ、仕様を毎回ゼロから考えるべきかというと、それは違います。
理由はふたつです。
ひとつは、単純に面倒だから。
すでに確立されている方法は、まず使えばいい。先人の試行錯誤をわざわざやり直す必要はありません。
もうひとつは、デザインそのものの問題です。
世の中に受け入れられるものの多くは、既存の美意識とつながっています。
すべてを一から考えてしまうと、その接続がなくなり、誰にも理解されない可能性が高くなる。
実際、多くのデザインは既存のもののバリエーションか、いくつかの要素の組み合わせです。
仕様も同じで、過去の仕様の変更や、組み合わせで成り立っています。
3、ジグザグミシンの活用
4、ジグザグミシンの活用
では、どんなときに仕様変更が必要になるのか。
いちばん分かりやすいのは、デザインを変えたときです。
でもそれだけではありません。
素材が変わる。
芯地が変わる。
生産方法が変わる。
手縫いがミシンになれば仕様は変わるし、素材が変われば最適な縫い方も変わります。
やっかいなのは、変化が少しずつ起きている場合です。
素材や環境が徐々に変わっているのに、これまでと同じ仕様で作り続けてしまう。そしてある時点で、急にうまくいかなくなる。
こういうことは、ときどき起きます。
そのとき、自分で仕様を考えた経験がないと、「仕様を変えないといけない」ということ自体に気づけません。
デザイン変更のように明確な理由があるわけではないので、ここで必要になるのは仕様に対する感度です。
いわゆる「ゆでガエル」の話と同じで、ゆっくりした変化ほど対応が難しい。
だからタイトルの
「仕様は、自分でしよう」 です。
でも、毎回ゼロから考えろ、という意味ではありません。
「いざとなれば一から考え直せる」という感覚を持っているかどうかは、とても大きい。
仕様を借りて使うことと、仕様を理解して使うことは、まったく別のことだからです。
服をつくるというのは、形を決めることだけじゃなく、つくり方を決めることでもある。
その意識は、いつも持っておいたほうがいいと、ボクは思っています。
