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工程がデザイン


服づくりは一般的に、「デザインを決める」「型紙を作る」「仕立てる」という順番で進めます。
ボク自身も基本的にはその流れで制作しています。でも実際には、型紙を作った後にデザインを見直したり、仕立てながら型紙を修正したりすることも少なくありません。

「気が変わった」、ということもありますが、主な理由は、変えたほうが無理のない構造になったり、縫製がスムーズになったりすると、後になって気づくことがあるからです。
制作の流れがスムーズであることは、効率の問題だけではありません。ボクは、「つくる流れがスムーズなものは美しい」と考えています。
ただ、ボクが普段行っているような一点物の制作では、効率がよくなるからといって、わざわざ工程を引き返して修正するより、非効率のまま完成させた方が早いこともよくあります。そのため、時間短縮だけを目的に修正することに、あまり意味がなかったりします。

それでも工程を戻って見直すのは、その服のためというより、自分自身の理解を深めるためです。目の前の一着だけでなく、長い目で見て少しずつ良くなっていくことの方が大切だと思っています。

一方で、この順番どおりに進めることが難しい服もあります。
フォーマルドレスやリメイクは、その代表的な例です。
あらかじめ型紙をつくることができなかったり、実際に組み立ててみないと方向性が決まらないこともあります。

こうした制作は、楽譜のない即興演奏のようです。
決められた順番に沿って進める方法を「楽譜演奏型」、状況を見ながら組み立てていく方法を「即興演奏型」と呼ぶなら、服づくりにはその両方が存在します。
「楽譜演奏型」の服を「即興演奏型」で作ることはできます。でも、「即興演奏型」が求められる服を、「楽譜演奏型」の工程だけで作ることはできません。

ただ、実際の制作では、慣習や、その時の成り行きによって工程が決まることが多く、改めてて考えることが、それほどあるわけではありません。
また、一着の中に両方の考え方が混在することもあります。

ここで大切なのは、工程の違いそのものが服のデザインに影響を与える可能性がある、ということです。

どの順番でつくり、どの段階で判断し、どこまで変更することを許すのか。
それらは単なる作業の手順ではなく、服の形や表情を決める要素になり得ます。

つまり、「どう作るか」は、「何を作るか」と切り離せない。
工程を考えること自体が、デザインすることの一部なのです。

大量生産の仕組みの中では、「楽譜演奏型」の考え方が中心になります。でも、人の手でものを作り続けるのであれば、「即興演奏型」の視点も大切にしておきたいと思います。

完成度だけを追い求めるなら、「即興演奏型」では完成度が下がる傾向にあるので、必要以上に採用するべき工程ではありません。でも、服の価値は完成度だけではありません。

工程がデザインである。

そう捉えたからといって、急に何かが変わるわけではありませんが、服の見え方が少し変わるかもしれません。

工程がデザイン

工程がデザイン


2026年10月05日