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キモノの一部式、二部式、三部式


キモノの一部式、二部式、三部式

キモノの一部式、二部式、三部式


「・・・簡単に着られる着物が誕生『三部式着物』が大ヒット」

正月のYahoo!トップページに、こんな記事が出てくるのは、ボクの日頃の閲覧傾向がバレているからでしょうけど、「二分割、三分割した着物が売れている」という記事を見かけました。

こういうアイデア自体は、昔からあったと思います。なので、具体的にどういう構造のモノなのかは、個人的にはあまり興味はありませんが、現象として関心があります。と同時に、疑問がわいてきました。

まず、「着付けを含めてこそのキモノ」だという考えがあるのか、ないのかは、ボクには分かりません。作法が異なると、何かを失ってしまう可能性はあります。

また、このような身頃にハサミを入れたキモノって、価格が高くなればなるほどやりにくいはずです。それは、そのキモノを着た姿がどう見えるとは無関係の世界です。

キモノって、マネキンに着せて見せることもありますが、衣紋かけに吊るして、背中を中心に身頃全体を見せる展示方法も一般的です。分割されたキモノでは、こういう見せ方はできません。 このことを、たとえば、自らの手で布を織っている、キモノの作家ならどう受け止めるかは、人それぞれでしょうけど、少なくとも、「伝統工芸展」のような世界では、受け入れられなさそうです。

「伝統」って、大切にすべきだし、素晴らしいものです。ただ、その美しい言葉のなかに、現実性の欠いた単なる懐古主義が混ざり込むことがあります。
個人が懐古主義を貫くのは自由でしょうけど、それを他の人、特に若い世代を巻き込むべきではありません。

二部式・三部式のキモノは、「服の構造を変えることで着付けを簡単にし、着てしまえば従来のキモノと同じ姿に見える」ことを目指しています。商品企画としては自然な発想で、もし自分が企画する立場でも、同じ方向で考えます。

ただ一方で、「同じ形に見えることは、本当に良いことなのか?」という問いも残ります。本来、形が変わることに対しては、もっと柔軟であっていいはずです。
なので、長期的な視点で考えると、結論は異なってくるように思います。ただ、その“長期”がどれほどの時間を指すのかは、正直なところ分かりません。

何かの「形」が「こうでなければならない」と固定された瞬間に、ボクは否定的になります。完全に普遍的な形が、特定の時代の歴史の産物ではなく、「ナマモノ」として使われ続けることは、あり得ないからです。

全般として、ネガティヴなことも多く書きましたが、衣文化が活性化されること自体は、間違いなくよいことだと思っています。
そして、二部式・三部式のキモノが、時間を経て再び一部式に収斂していくとしたら、それもまた自然で、悪いことではないと感じています。


一部式のキモノ

一部式のキモノ


2026年1月04日